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WHOプライマリーヘルスケア看護開発協力センター

WHOプライマリーヘルスケア看護開発協力センター

2018年度

看護 2018年11月号 第70巻 第13号

第12回WHO看護・助産開発協力センター グローバルネットワーク学術集会への参加

WHO看護・助産開発協力センターは、それぞれの活動を共有し、連携・交流を深めるために2年に1度総会を行い、総会に合わせてWHO看護・助産開発協力センター・グローバルネットワーク学術集会(以下:学会)も開催している。2018年度の第12回学会は、オーストラリアのJames Cook大学がホスト校となり、ケアンズで、7月18〜19日の2日間、総会に先立ち開催された。筆者らは、本学会に参加し、聖路加国際大学WHO看護開発協力センター(以下:WHOCC)の研究活動を報告し、各国のWHOCCとの交流を行った。

“People-Centered Care”の重要性を語る
 本学会の初日は、学会のホスト校のSandra Harding氏(James Cook大学)のあいさつから始まり、次にDebra Thoms氏(連邦チーフ看護官)が、持続可能な開発目標(以下:SDGs)の達成に向けたオーストラリアの看護・助産について紹介した。その後、“グローバル・ナーシング・リーダーシップとSDGsの達成”をテーマに、WHOCC事務局のJohn Daly氏がWHOCCの役割やユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けたSDGsの意味について語った。学会2日目の基調講演では、“SDGs達成とグローバルな責任”をテーマに、WHOチーフ看護官のElizabeth Iro氏が、2030年に向けたSDGsの第3目標「すべての人に健康と福祉を」を達成するために、“People-Centered Care”(以下:PCC)が重要であることを紹介した。その講演で語ったケアの姿勢として“for people with people(人々のために人々とともに)”の言葉が、筆者には特に印象に残った。
 本学会では、基調講演のほかに、世界各国で取り組む研究活動の口演発表(約70演題)と、ポスター発表(約50演題)が行われた。筆者らは、本学WHOCCの研究基盤にあるPCCにおけるパートナーシップ尺度開発の経過報告をポスター発表した。このPCC尺度は、個人や地域社会の健康課題の改善に向け、保健医療従事者と市民とがともに取り組む活動メンバーとのパートナーシップを測定する尺度として開発しているものである。また、本学研究センター客員研究員である新福洋子が、看護イノベーションとSDGs部門で社会資源が少ない国における看護助産教育の能力開発としてタンザニアでの取り組みについて口頭発表を行った。さらに、学会期間中には、西太平洋地域のWHOCCメンバーと取り組んでいる高度実践看護師の役割に関する国際共同研究の会合も行い、進捗状況と今後について直接確認し合った。
 今回の学会への参加をとおし、本学WHOCCの研究活動を世界に発信するとともに、WHOやWHOCCのメンバーとの直接交流が行え、WHOCCとしての役割や課題について情報共有をすることができた。さらに、PCCを基盤においた本学WHOCCの取り組みの意義を再確認でき、とても有意義な機会となった。
最後に、本学会翌日の総会で、WHOCC事務局が4年間務めたオーストラリアのTechnology Sydney大学から、アメリカの Johns Hopkins大学へと移され、2年後の2020年のWHOCC学会・総会の開催は、タイのChiang Mai大学に決定された。
(文責:髙橋恵子、新福洋子)

看護 2018年9月号 第70巻 第11号

第2回WHO協力センター連携会議が開催

 2018年4月14日(土)に、国内32のWHO協力センター(WHO Collaborating Centre以下:WCC)からの50名、WHO西太平洋地域事務局からの2名、国立国際医療研究センターからの11名が一堂に会し、「具体的な連携・協働に向けて」をテーマに第2回WHO協力センター連携会議が国立国際医療研究センターで開催された(写真1)。

写真1 参加者による集合写真

 第1回は2017年4月23日(日)に、国内34の WCCが集まり、「日本のWHO協力センターの連携促進と今後の連携会議の継続について」をテーマに国立国際医療研究センターで開催された。会議には、WHO西太平洋地域事務局からシン・ヨンス地域事務局長、葛西健事業統括部長も出席され、WCCとしての互いの活動を知る貴重な機会となり、テーマごとのグループ討議からさまざまな連携・協働の案が生み出された。
 今回の会議は、前回会議以降のWCC間の連携・協働の実践状況のフォローアップを行い、教訓を学び合い、さらなる連携・協働に向け具体的な協議を行うことを目的に開催することになった。第1回会議後、17施設が連携・協働していた。講師派遣が最も多く6例、次いで共同研究4例、シンポジウム企画・実施2例、情報交換2例、その他は研修企画・実施、ワークショップ開催、人材交流がそれぞれ1例であった。

連携・協働の事例報告

会議では、WCC8施設から、連携・協働の事例報告があった。共同研究事例として、富山大学大学院医学薬学研究部と北里大学東洋医学総合研究所から「伝統医学の漢方診療標準化プロジェクト」について、北海道大学環境健康科学研究教育センターと大阪母子医療センターから「胎児期から生涯の健康を考慮した母子保健領域の疾病負担と効果的予防介入方法についての俯瞰的研究」についての発表があった。
 また、2017年11月24日(金)〜26日(土)に開催された「グローバルヘルス合同大会2017」★1で、シンポジウムを共催した事例が紹介された。「国際保健人材育成とWHOコラボレーティングセンター」という題材で、聖路加国際大学大学院(聖路加国際大学におけるグローバルヘルスに貢献する若手看護人材育成)、東京医科歯科大学大学院(WHO健康都市・都市政策研究協力センターの活動と研修の機会)、国立保健医療科学院(国立保健医療科学院における研修医を対象とし国際保健も加味した地域保健研修の経験)、群馬大学保健学研究科(多職種連携教育のWHO連携活動による国際保健人材育成)、国立国際医療研究センター (国立国際医療研究センターにおける国際保健に関する継続教育プログラム)が発表したとの報告があった。

今後の連携・協働に向けて

 葛西WHO西太平洋地域事務局事業統括部長から、WHO西太平洋地域における重点課題と方向性についてのお話があり、その後、今後の具体的な連携・協働に向けてグループに分かれて協議した。
 研究や、勉強会・講演会などの開催を協働で実施していこうという話し合いがもたれた。特に私のグループでは、現在実施しているプロジェクトの評価方法についてWCCで勉強会を開き、専門家に学びたいという意見が出た。このような顔の見えるつながりを持つことで、今後もWCC同士の連携や協働を深めていきたい。
(文責:大田えりか)

★1 第58回日本熱帯医学会大会・第32回日本国際保健医療学会学術大会・第21回日本渡航医学会学術集会 合同大会

看護 2018年7月号 第70巻 第9号

WHOや世界保健に関わる世界の最新動向について聖路加国際大学と兵庫県立大学のWHO指定研究協力センターより交互に隔月で報告する。今月は聖路加国際大学WHO看護開発協力センター(プライマリーヘルスケア分野/ 1990年任命〈委嘱〉)から。

WHO西太平洋地域事務局主催 第5回病院の質と患者安全管理研修コースin 国立保健医療科学院の報告

相互の支え合いと知識の共有のために

 2018年3月12〜16日、WHO西太平洋地域事務局(以下:WPRO)主催による「第5回病院の質と患者安全管理研修コース」が国立保健医療科学院において開催され、本学WHO看護開発協力センター(以下:WHO CC)がこれに参画した。西太平洋地域のカンボジア、ラオス、モンゴル、フィリピン、ベトナムから、各国で医療の質の改善に責任のある代表者、計20名が参加した。
 研修には、国連の持続可能な開発目標(SDGs)やユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)による平等で質の高い医療をめざした講義、そしてわが国のいくつかの医療機関の見学、グループでの討議や高齢者疑似体験演習が含まれていた。これらを通して、①各国での医療の質と安全性を向上するための組織への働きかけや、②質改善のための概念や実践、使用可能なツールを理解し、国としての医療の質と安全管理のネットワークを持ち、相互に支え合い、知識を共有することが目的とされていた。

聖路加国際大学WHO看護開発協力センターによる 小講義でPCCの概念と実際を共有

著者( 右から2 人 目)の講義の後に、 著者のPCC のスラ イドを使いながら PCC の概念を確認 し、参加者に質問を するNittita 氏(左)

 本学WHO CCは昨年度に続き、People-Centered Health Serviceをテーマに、小講義を行った。講義では、超高齢社会であるわが国の人口構造や家族形態、社会保障と今後の変化、医療機関の種類と特徴、そして地域包括ケアについて触れ、参加者の各国よりも高齢化が数段進んでいるわが国の状況と高齢者のための保健・医療システムを概説した。そして、本学がここ10年取り組んできた、People-Centered Care(以下:PCC)による市民と専門職のパートナーシップモデルによる保健・医療サービス提供のあり方について解説した。ここでは、本学が市民との協働による妊産婦から高齢者までを対象とした多様な実践活動から開発したPCCモデルを軸に、WHO の「患者安全とPCCサービスモデル」を対比しながら、WPROが作成したPCCの解説ビデオを用いて、より具体的な理解を促進していった。そして最後には、本学WHO CCにおいて実践しているPCC活動の中から、都市部の高齢者と小学生の世代間交流プログラムを例として、市民と専門職のパートナーシップのあり方について触れ、PCCによる高齢者へのアウトカムとして、うつの改善などに有効であることを解説した。
 WHO WPROの本セミナーの担当官Nittita Prasopa-Plaizier氏は、PCCモデルの推進派である。講義の後に自ら各参加者に「あなたは患者のことをよく理解していますか?」「患者を尊敬していますか?」など、具体的なPCCの構成要素に触れる質問をして、各国の医療機関のトップである参加者が「ええ、そうしていますよ」と応じるなど、より具体的にイメージできるような解説を加えた。
医療職が患者を理解し、互いに尊敬し合い、各々が役割を担い、意思決定を共有するというPCCのパートナーシップを行うことに費用はかからない。各国の限られた医療資源の中でケアを行う専門職の姿勢として、PCCはSDGsの達成にとても有効であると感じることができたセミナーとなった。
(文責:亀井智子)

看護 2018年5月号 第70巻 第6号

WHOや世界保健に関わる世界の最新動向について聖路加国際大学と兵庫県立大学のWHO指定研究協力センターより交互に隔月で報告する。今月は聖路加国際大学WHO看護開発協力センター(プライマリーヘルスケア分野/ 1990年任命〈委嘱〉)から。

WHOデジタルヘルス最前線と国際機関で働くためのキャリア開発

 2017年11月11日、世界保健機関(World Health Organization:WHO)ジュネーブ本部Service Delivery and Safety(SDS)★1部門のテクニカルオフィサー・梶原麻喜氏をお招きし、聖路加国際大学WHOプライマリーヘルスケア看護開発協力センターPeople-Centered Care(PCC)セミナーを開催した。
 はじめに、聖路加国際大学研究センターPCC実践開発研究部・WHO看護開発協力センターの亀井智子部長・センター長より、聖路加国際大学のWHOコラボレーティングセンターとしての歴史、現在取り組んでいるPCCの活動について説明した。
 その後、梶原氏に「WHOデジタルヘルス最前線と国際機関で働くためのキャリア開発」と題して、
①WHOでの実際の取り組み、②デジタルヘルスについて、③国際機関でキャリアを構築するために、という3点に関して講演していただいた。

WHOの取り組み

 はじめに、WHOの組織の仕組み、2017年5月の選挙で選出されたテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長、SDS部門で新しく選出されたシニアマネジャーを紹介。WHOに課せられている6つの機能★2や担当する分野について、さらに、新事務局長が独自に重点分野としている、すべての人々の健康、危機管理、女性、子どもと青少年、気候と環境変動による健康へのインパクト、WHO変革に関して説明された。
 また、取り組むべき課題として、教育、気候変動、ジェンダー、不平等、実施手段などを掲げ、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」について述べられた。SDGs達成のためにユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage:UHC)★3の概念が重要視されており、すべての人に健康と福祉を届けるために、保健サービスの量と質の両方の重要性が問われていると指摘。保健システム強化のため、質の高い安全な保健サービスを提供できるよう支援しているSDS部門での横断的な取り組みに関しての解説もあった。

デジタルヘルスとは

講師の梶原麻喜 氏(1 列目右か ら3 人目)とセ ミナー運営ス タッフ

 デジタルヘルス★4については、近年のデータ収集項目の増加、正確で効果的なデータ分析の必要性、科学的根拠に基づいた意思決定や医療従事者および患者、患者家族、地域への支援の需要が高まっており、UHC達成に向けて重要な要素となっていることを報告。リプロダクティブ・ヘルス、非感染性疾患に関するプロジェクトに第一線でかかわった経験に基づき、開発途上国での展開と今後の課題についても述べられた。
 最後に、自身のキャリアパスについてと、国際機関でキャリアを構築するために重要な要素に関してお話があった。会場からは、活発な質疑があり、国際機関でキャリアを構築するためには、どのような知識や経験が必要かを考える機会となった。
(文責:大田えりか)

★1 各国の保健システムの効率化と有効性のためにそれぞれの国が保健医療について再考することを支援する部門 
★2 ①医学情報の総合調整、②国際保健事業の指導的かつ調整機関としての活動、③保健事業の強化についての世界各国への技術協力、④感染症およびその他の疾病の撲滅事業の促進、⑤保健分野における研究の促進・指導、⑥生物学的製剤及び類似の医薬品、食品に関する国際的基準の発展・向上 
★3 すべての人が適切な保健医療サービスを、必要なときに支払い可能な費用で受けられること 
★4 eヘルスと同義。情報通信技術(ICT)と医療にかかわる、すべてのコンセプトとアクティビティの総称。医療情報技術、電子カルテ、遠隔医療などを含む